車の日常点検(運行前点検)のやり方と、点検した箇所に不具合を発見した時に、その対処の方法を元ディーラー整備士の筆者がわかりやすく丁寧に解説します。
この記事を読めば、車の日常点検(運行前点検)を自身を持っておこなうことができるし、もし点検した箇所に異常がみられた場合にも、おちついて対処できます。
実は、車の使用者には運行前点検(日常点検)を実施することが法律で定められています。
それをしないからといって、法律で罰せられるとかいうのは一切無いのですが、車を安心安全に走行するうえで欠かせないことです。
では、運行前点検(日常点検)とはいったいどのようなことをするのでしょうか?
このような疑問にできるだけ専門用語を使わずに、わかりやすいように解説していきます。
運行前点検(日常点検)の点検項目
ブレーキ液の量の点検
上の写真は車のブレーキ液のリザーバタンクを撮したものです。
車のブレーキ液の量は、リザーバタンクの液面がどの位置にあるかを確認します。
リザーバタンクには上と下に線が引かれていて、上の位置がアッパー(MAX)下の位置がロアー(MIN)となっています。
基準はMAXとMINの間ですが、ブレーキ液が極端に少ない場合にはブレーキの摩耗やオイル漏れが考えられるので、点検が必要になります。
もし、ブレーキ液の量がMINレベルより下の場合には、ブレーキが効かなくなってしまう可能性もあるので、専門の業者に連絡をして車を引き取りにきてもらったほうが安全です。
ブレーキのトラブルは事故に直結してしまうので、その場合にはすぐに自動車整備工場などで点検してもらいましょう。
ラジエター冷却水の量の点検
ラジエター冷却水は、車のエンジンを冷やす為に重要な役割をしています。
冷却水が足らなかった場合には、エンジンがオーバーヒートしてしまい走れなくなってしまう事もあります。
また、エンジンにダメージを与えてしまい高額な修理代がかかってしまうので、日頃から冷却水の量には気を使っていることが大事です。
ラジエター冷却水の点検は、リザーバータンクの液量がFULL(MAX)とLOW(MIN)の間に入っている事を確認します。
ラジエターの冷却水には、不凍液(ロングライフクーラント)が使われていて、色は、赤色、緑色、青色、ピンク色に区別されています。
赤色と緑色の不凍液は、耐用年数が2~3年なので車検時の交換がいいでしょう。
青色、ピンク色の不凍液は、スーパーLLC(スーパーロングライフクーラント)という物で、耐用年数が10年と長くなっています。
ですから、車検時の毎回の交換は必要ありません。
普通のLLCとスーパーLLCは混ぜて使うことができないので、交換する時には今まで入っていたLLCを使うのが基本です。
少し前の車では、普通のLLCを新車時に使用していましたが、近年の車はスーパーLLCを新車時から使用しているものがほとんどなので、不凍液の交換はユーザーに要望されない限りおこなっていないのが現状です。
そして、普通のLLCでも本当は2~3年ごとの交換が必要ですが、実際のところ自動車整備の現場では、車検時でもその分金額が多くかかってしまうので、ユーザーにすすめているところは少ないです。
結局のところ、不凍液の管理は自己責任となってしまうので、自分の車がいつ不凍液を交換したかは把握しておく必要があるでしょう。
ラジエターのリザーバタンクの液が少ない時には、エンジンが冷えた状態の時にMAXの位置まで不凍液を補充します。
普通のLLCの場合には、リザーバタンクに足す程度なら水道水で充分ですが、スーパーLLCの場合には水道水と混合することはできないので注意が必要です。
入れ過ぎてしまうと、エンジンが温まった時に上のキャップから溢れ出してしまう事もあるので、注意しましょう。
また、MINの線より液面が少ない時には、冷却系統の水漏れが考えられるので自動車整備工場などで点検をしてもらいましょう。
不凍液には、水で希釈されているタイプとそのままの原液のタイプがあるので、自分で購入して補充する時には注意が必要です。
エンジンオイルの点検
エンジンオイルは、オイルレベルゲージで点検します。
ちなみにステップワゴン RG1 の場合は黄色の矢印の部分です。
エンジンオイルの量はレベルゲージのMIN(下の穴)とMAX(上の穴)の間にあればOKです。
レベルゲージの印は、下の写真のように穴であったり、線であったり、斜線であったりとさまざまです。
エンジンオイルが少ない時には、オイルの補充、又は交換が必要です。
エンジンオイルは漏れなどがなくても、走っていれば少しは消費してしまうので、少しくらい減っているからと言って、あまり気にする必要もないですが、定期的に点検する必要はあります。
エンジンオイルの量がレベルゲージに触らないほど減っていた場合には、オイルが今現在どのくらい入っているかはわかりません。
なので、エンジンをかけて走行することはエンジンの焼き付きをおこしてしまう可能性もあるので、やめておいたほうがいいでしょう。
もし、どうしても走行しなければならない事情(自動車整備工場までは走らなければならない)という場合には、とにかく安いオイルでいいのでエンジンオイルを補充しなければなりません。
間に合わせですので、MAXレベルの位置まで入れる必要はないです。
エンジンオイルの交換を定期的にしている人なら問題ないですが、たまにしかしない、という人はそのような時の為に、自宅にエンジンオイルを準備しておいたほうがいいでしょう。
バッテリー液量の点検
バッテリー液が規定のライン(上限のラインと下限のライン)の間にあるかを点検します。
バッテリー液は希硫酸が使われていますが、補充する時にはバッテリー用に生成された蒸留水を使います。
バッテリー液を補充する時の注意点として、液面がアッパーラインを超えないようにすることが鉄則です。
多く入れ過ぎてしまうと、バッテリー液(希硫酸)が溢れ出してしまい、金属部分を腐食してしまいます。
また、バッテリー液面がロアーレベルまできてしまうと、補充する蒸留水も多くなってしまうので、バッテリー液が薄くなってしまいます。
そうなるとバッテリー自体の性能も低下してしまうので、ロアーレベルまで下がらないうちに補充をしたほうが良いです。
できれば、アッパーとロアーの中間くらいまで減ってしまったら補充しておきましょう。
ウインドーウォツシャー液の量とワイパーの拭き取り状態
ウインドーウォッシャー液の量は、ウインドーウォッシャータンクのゲージ、又は、タンクを脇から覗いて点検します。
ウインドーウォッシャー液は普段あまり気にする人は少ないですが、車を安全に走らせるうえで重要なものです。
雨が降るとワイパーを動かして視界を確保しますが、その時にフロントガラスに泥や埃、鳥の糞などが付着していた場合に、そのままワイパーを動かしてしまうとフロントガラスに細かい傷などがついてしまう可能性があります。
また、ワイパーの拭き取りも悪くなってしまうので走行にも支障をきたしてしまいます。
フロントガラスに細かい傷がついてしまうと、なおすのに高額の修理代がかかってしまいます。
ひどい場合にはフロントガラスを交換しなければならなくなってしまい、10万円単位の出費が出てしまうこともあります。
そうならない為に、ウインドーウォッシャー液を噴射して汚れを洗い流します。
ウインドーウォッシャー液を点検したら、ウォッシャー液がきちんと噴射されるかも点検します。
ウォッシャー液が入っていても、それがフロントガラスに向かってきちんとワイパーの作動範囲内に噴射されないと意味がないですから。
それと、ワイパーの切れや拭き取り具合も点検しましょう。
ワイパーゴムが切れていたり、傷んでいたりすると、ワイパーを動かしててもフロントガラスを綺麗に拭き取れません。
また、フロントガラスを傷付けてしまう事もあるので、そうなった場合にはフロントガラスの交換が必要になってしまい、高額な修理代がかかってしまいます。
ワイパーゴムは価格も安いので、早め早めに交換したほうがいいでしょう。
灯火装置(ランプ類)の点検
イグニッションスイッチをONの状態にして、各ランプ類が正常に点灯(点滅)することを確認します。
また、ランプ類に亀裂や損傷などがないかを確認します。
ヘッドライト、スモールランプ、テールランプ、ストップランプ、ウインカー、バックランプ、ハザードランプなどです。
ストップランプは一人では確認が困難なので、誰かに手伝ってもらうか、鏡などを利用して点灯を確認する必要があります。
灯火装置の不具合は、事故につながる可能性もあるので、こまめに点検する必要があります。
また、整備不良車と見なされてしまいキップを切られてしまうこともあるので、注意しましょう。
タイヤの亀裂や溝の深さ、空気圧の確認
タイヤが減っているとスリップしやすくなり、大変危険です。
また、亀裂などが入っていると走行中にバースト(破裂)の恐れもあります。
また、タイヤの空気圧が正常な値でないと、走行中にハンドルが取られたり燃費が悪くなったり、ブレーキの効きにも影響を与えます。
タイヤは車と路面の接触している唯一の場所なので常に気を配っておく必要があります。
エンジンのかかり具合や異音の点検
エンジンをかけた時のかかり具合(セルモーターを回した時にすぐにかかるか)、エンジンがかかってから変な音がしないか(カタカタ、ガラガラ、キーキーなど)を確認します。
セルモーターが勢いよく回らない場合には、バッテリーの不良、セルモーターの不良などが考えられます。
エンジンの低速・加速の状態の点検
エンジンが加速した時にスムーズに加速しない、アイドリングでガクガクしたりエンストしたりする、アクセルペダルを戻した時にスムーズに回転が落ちるかなどの点検。
ブレーキの踏みしろと効き具合の点検
ブレーキペダルをいっぱいに踏んだ時にペダルと床板との隙間が適当であるか、踏みごたえが適当であるかを点検します。
この時にブレーキペダルが床板とくっついてしまったり、踏みごたえがないような感じの場合には、ブレーキの異常が考えられるので至急、整備工場でみてもらいましょう。
駐車ブレーキの引きしろの点検
駐車ブレーキを引いた(踏んだ)時に引きしろ(踏みしろ)が適当であるかを点検します。
この時に引きしろ(踏みしろ)が多過ぎたりすると、駐車ブレーキがきちんとかからないで坂道で動いてしまうこともあります。
また、反対に少な過ぎると駐車ブレーキを戻した時に戻りきらないで、ブレーキの引き摺りの原因となってしまうこともあります。
駐車ブレーキは摩耗してくると引きしろ(踏みしろ)は多くなってくるので、普通はブレーキの調整不良や故障などが無い限り、引きしろ(踏みしろ)が少なくなるということは考えられません。
以上がユーザーが自分の車を運転するうえで、自分自身でおこなうことができる運行前点検(日常点検)の内容です。
毎日おこなう必要はありませんが、定期的におこなうことによってトラブルを未然に防ぐことができます。
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