10万kmで交換のタイミングベルト。
車検の時に10万kmが間近だったら、車検見積もりの時に交換を勧められます。
では、そのタイミングベルトは交換しなくても車検に通るのでしょうか?
結論から先に言いますと、タイミングベルトは交換しなくても車検には通ります。
しかし、交換しないで切れてしまった場合は、重大なリスクが伴うことも憶えておく必要があります。
タイミングベルトとは
タイミングベルトって何?
どこについているの?
タイミングベルトという部品は、車に詳しくない方は、あまり聞き慣れない言葉なので、それっていったい何?
と思うかも知れません。
タイミングベルトは、車のエンジンの内部にある部品で外からは見えません。
タイミングベルトの取り付けられている位置はエンジンの前側で、タイミングカバーによって覆われているので見ることはできず、そのままの状態ではベルトの痛み具合いを点検することはできません。
タイミングベルトは下の写真のベルトです。
交換時期は距離数で判断するしかありません。
タイミングベルトはどのような役割をしているのか
タイミングベルトの役割は、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝えることです。
エンジンは、吸入・圧縮・膨張・排気、という順番で、ガソリンを燃焼させて、燃焼した時の爆発力でシリンダー内のピストンを押し下げて、エンジンを回転させます。
ピストンは、クランクシャフトと繋がっており、ピストンが上下に動くことで、クランクシャフトが回転します。
クランクシャフトが回転するとカムシャフトも回転し、カムシャフトの回転で吸気バルブと排気バルブが開閉します。
そのクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝える重要な役割をしているのが、タイミングベルトです。
タイミングベルトはなぜ交換が必要か
今から40年ほど前は、タイミングベルトを使っている車種はそれほど無く、チェーンで駆動するものが一般的でした。
当時のタイミングチェーンは、静粛性・精度があまりよくなかったので、それを解消する為に作られたのがタイミングベルトです。
タイミングベルトは、ゴムでできているので、チェーンに比べると静粛性や精度の点で有利であり、且つ、エンジンの軽量化にも貢献して、コストの面でもメリットが大きいものでした。
しかし、タイミングベルトにも唯一欠点があり、それは10万kmで交換しなければならないことです。
タイミングベルトは耐久性が優れたゴムでできているので、ファンベルトなどに使われているゴムとは比較にならないほど高性能です。
しかし、いくら耐久性に優れていてもゴム製品である限り、限度はあります。
そこで、メーカーが交換の基準としたのが10万kmです。
その10万kmという距離数は安全性に余裕を持った距離数なので、10万kmでタイミングベルトが切れてしまうということは、滅多にありません。
しかし、エンジンのメンテナンスが悪いと10万Kmにならなくても切れてしまうこともあります。
タイミングベルト自体はメンテナンスフリーなので特別なにかする必要はないですが、エンジンオイルのメンテナンスが悪いと、カムシャフトのオイルシールやクランクシャフトのオイルシールなどからオイル漏れが発生して、それがタイミングベルトに付着して切れやすくなってしまいます。
そのような理由で、10万kmにならないのにタイミングベルトが切れてしまった事例もあります。
又、軽自動車の場合は同じ10万kmでも、普通乗用車に比べればエンジンの常用回転数が高いので、耐久性は低くなってしまいます。
実際に私が現場で働いていた時も、10万kmまでいかずに切れてしまった軽自動車は結構ありました。
ですから、交換時期が来たらいつ切れてもおかしくないので、絶対にタイミングベルトは交換しておくべきです。
タイミングベルトは使われている車と使われていない車があるので、自分の所有している車がどちらかは把握しておく必要がありますね。
タイミングベルトが切れてしまったらエンジンが破損することもある
タイミングベルトは、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝えてバルブを動かしているので、切れてしまうと、クランクシャフトが回転しているのにバルブは止まっている、という状態が起きてしまいます。
そうなると、バルブとピストンは当たってしまい、バルブが破損してしまいます。(注:バルブが緩衝しないように作られているエンジンもあります)
そうなったら、エンジンはもうかけることはできなくなってしまい、修理もシリンダーヘッドを外してバルブを交換しなければならないので、高額な修理代が発生してしまいます。
タイミングベルトは切れてしまうと、エンジンがかからないばかりか、エンジンを交換する事になってしまう可能性もあります。
タイミングベルトは切れる前兆というものがあるのか
タイミングベルトは突然切れます。
タイミングベルトに切れる前兆というものはありません。
ファンベルトなどは傷んでくると、キュルキュルなどの音がして交換時期がわかりやすいですが、タイミングベルトはそのような異音がしないので、音で判別するということはできないです。
外観からは見ることができない、異音もしない、となると交換を判別する術がない。
なんともやっかいな部品です。
ですから、タイミングベルトの交換は距離数で判断するしかないのです。
タイミングベルトの交換と一緒に交換したほうがいい部品
タイミングベルトの交換はクランクシャフトプーリーを外さなければできません。
どうせ、タイミングベルトを交換するのだったら、ついでにテンショナー、アイドラプーリー、ウォーターポンプ、カムシャフトとクランクシャフトのフロント側オイルシールも交換しといたほうがいいです。
テンショナーやアイドラプーリーは大抵の場合、タイミングベルトとセットで交換します。
ウォーターポンプやカムシャフト、クランクシャフトオイルシールは、ユーザーの要望に応じて交換しますが、ほとんどの方は一緒に交換することが多いです。
なぜかと言いますと、ウォーターポンプ、カムシャフトのオイルシール、クランクシャフトフロント側オイルシールの交換はタイミングベルトを外さないとできません。
後から、ウォーターポンプが壊れた、カムシャフトやクランクシャフトのオイルシールからオイル漏れがしてしまった、などといった場合には再びタイミングベルトの脱着工賃がかかってしまいます。
タイミングベルトを交換する時にそれらの部品も一緒に交換しておけば、工賃も少し追加になるだけで済みます。
タイミングベルトを交換する時には、同時に関連する部品も交換しておいたほうがいいですね。
タイミングベルトの交換費用
タイミングベルトの交換費用は、車種によってかなり幅があります。
半日もあればできるのもあるし、1日では終わらないようなものもあります。
軽自動車なら3万円前後で普通車なら6万円前後が多いです。(注:車によっては10万円くらいかかるものもあります)
しかし、それはタイミングベルトのみの交換費用であって、ウォーターポンプやオイルシールなどを交換した場合には、その分の工賃と部品代が加算されます。
オイルシールなんかは部品代も何百円程度なので、それほど金額が上乗せされることはないです。
ウォーターポンプは部品代が1万円程度ですが、冷却水(LLC)を抜く必要もあるので冷却水の油脂代もかかります。(基本的にLLCは再使用はしないです)
工賃は車種によってかかる時間が違うので一概には言えませんが、追加で1万円~2万円の場合が多いです。
タイミングベルトを交換してあるかどうかを調べる方法
タイミングベルトは外からは見えません。
新車で購入した車であれば、タイミングベルトを交換したかどうかは自分自身でわかっていますが、中古車で購入した場合は、どうやって調べるのでしょうか。
タイミングベルトが交換してあるかどうかは、整備記録簿に記載されています。
または、タイミングベルトを交換した場合には、エンジンルームか運転席のドアなどの見えやすい箇所に、交換済みのシールが貼られているはずなので、それを確認します。
シールには、交換した日付と距離数が書かれているのでそれを見て判断します。
シールの貼る位置というのは特別決まっていないので、交換した整備士の気分しだいです。
近年の車はタイミングベルトを使用していない
近年の車はタイミングベルトを使用しないで、その代わりにチェーンを採用している車が増えてきました。
昔に戻ったみたいですが、それには訳があります。
昔は、タイミングベルトのほうが、精度・軽量・コスト・静粛性・の点で有利でした。
しかし、近年は技術の進歩でチェーンでもタイミングベルトに劣らない物を作ることができるようになって、10万kmごとに交換が必要になるタイミングベルトは使われなくなってきたのです。
車を中古車で購入する時には、その車がタイミングベルトが使われているかどうかは必ず確認しましょう。
まとめ
タイミングベルトは車検時に10万kmになっていても、交換しなくても車検は通ります。
しかし、タイミングベルトを交換しないで切れてしまった場合は、重大なリスクを伴います。
走行時に切れてしまうと、その場でエンジンは止まってしまってかかりません。
また、バルブがピストンと当たってしまう車もあり、エンジン破損に繋がってしまいます。
タイミングベルトは、10万kmで必ず切れるわけではありませんが、10万kmを過ぎるといつ切れてもおかしくないです。
特に、軽自動車の場合には10万kmにいかないうちに切れてしまった事例もあります。
普通車でも、エンジンオイルなどのメンテナンスが悪いと、タイミングベルトが10万kmにいかないうちに切れてしまう場合もあるので、エンジンのメンテナンスは日頃からきちんと行なっておかなければなりません。
それと、外国車の場合は、国産車と違って早めに交換時期が指定されているものもあるので注意が必要です。
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