自動車を運転していて急激にアクセルを踏んだときにカリカリとかキンキンとかエンジンから異音がすることをノッキングといいます。
そのノッキングが起きる原因とは何でしょうか。
ノッキングが起きたときの対策は何をすればいいのでしょうか。
また、修理費用はいくらかかるのでしょうか。
この記事は自動車整備歴30年以上の筆者が、エンジンがノッキングを起こす原因とノッキングが起きたときの対策、ノッキングを放っておいた場合にエンジンに及ぼすダメージ、修理費用などを詳しく解説します。
エンジンのノッキングとは
ガソリンは燃焼室内で混合気となって点火されると火炎伝播が始まります。その火炎伝播が進むにつれて既に燃焼されたガスの膨張によってまだ燃焼されていない未燃焼ガスが圧縮され、未燃焼ガスの温度が急上昇してついには自然発火を起こしてしまいます。
この未燃焼ガスの発火が爆発となりその衝撃波が高速でシリンダー内を往復して激しいガス振動を起こし打音を発生します。
この現象がノッキングです。
エンジンのノッキングの原因
エンジンがノッキングを起こす原因としては、以下のようなことが考えられます。
燃料のオクタン価が低い
燃料のオクタン価とはガソリンのエンジン内での自己着火のしにくさを表すもので、オクタン価が低いほどノッキングを起こしやすいです。
ハイオクガソリンはオクタン価が高く、レギュラーガソリンはオクタン価がそれよりも低いので、ハイオク仕様の車にレギュラーガソリンを入れるとノッキングを起こしやすくなってしまいます。
ハイパワーの高性能エンジンは、圧縮比が高く設定されているのでシリンダー内部の燃料は高温になり、燃料が自然発火しやすくなってノッキングを誘発してしまいます。
その為、燃料もノッキングをおこしずらいハイオクガソリンが指定されています。
現在の車は、ハイオクガソリン仕様の車にレギュラーガソリンを入れても、コンピューターでノッキングを起こさないように点火時期を遅らせるので、必ずしもノッキングが起こる訳では無いですが、そのぶんパワーも落ちて燃費にも悪影響を及ぼすので、ガソリン代を安くしようとしてハイオク仕様にレギュラーを入れてもあまりコストの面でのメリットは無いでしょう。
点火タイミング(点火時期)が早すぎる
点火タイミング(点火時期)とはエンジンのピストンが圧縮上死点(一番上に上がった状態)のクランク角度で何度手前で点火するかを決めたものでエンジンによって各々決められています。
点火タイミングが早すぎるとピストンが上昇中に燃焼ガス圧力が最高となってしまい、ピストンを反撃するかたちとなってしまうのでノッキングが起きてしまいます。
点火時期がずれてしまう原因としては、クランク角センサーの不良、カムポジションセンサーの不良、タイミングベルト(チェーン)の歯飛び、ディストリビューターのずれ、などが考えられます。(理屈の上では)
但し、クランク角センサーの不良、カムポジションセンサーの不良などは、一般的に点火そのものがしない場合が多く、私の経験上センサーが原因で点火時期がずれるということは無かったです。
また、タイミングベルト(チェーン)のずれやディストリビューターのずれなどは、自然に起こることは無いので、何かの修理で脱着をしてその時の組み付け不良でずれてしまった、と考えるのが妥当でしょう。
タイミングベルト(チェーン)が伸びてしまって点火時期がずれてしまうことはありますが、その場合は点火時期が遅れる方向にずれるので、これもまた考えにくいでしょう。
点火時期が遅れている場合は、エンジンのパワーはダウンするがノッキングは逆に発生しずらくなります。
燃焼室内にカーボンが推着した場合
燃焼室内のインテークバルブ、エキゾーストバルブ、ピストンの頭部などにカーボンが推着するとそのカーボンによってエンジンの放熱効果が悪くなりノッキングが起きやすくなります。
また、カーボンが推着したことによってプレイグニッションを起こしノッキングを起こしやすくなってしまいます。
(プレイグニッションとは、スパークプラグの過熱、燃焼室内のカーボンの推着などによってヒートポイントが形成されスパークプラグの火花が発生する前にガソリンが点火してしまうことです)
燃焼室内のカーボンの量が多い場合にはシリンダーヘッドを外してカーボンを除去しなければなりません。
また、インテークマニホールド内にも大量のカーボンが蓄積している可能性もあるので、インテークマニホールドの清掃、または交換も考えなければなりません。
シリンダーヘッドの脱着、ヘッドガスケットの交換、インテークマニホールドの清掃、または交換などを考えると、最低でも5万円、車によっては20万円以上もかかってしまうこともあります。
スパークプラグの熱価が違う場合
スパークプラグが焼けすぎている場合にはプレイグニッションを招きやすくノッキングを起こしやすくしてしまいます。
このようなときには高熱価の冷え型プラグに交換すればノッキングを防止できます。
ただし、現代の車においてはスパークプラグの熱価は標準のスパークプラグを使っていればノッキングの原因とは考えられないです。
もし、スパークプラグの熱価が原因だとしたら熱価のあっていないプラグが付けられている可能性もあります。過去に間違って交換されている可能性もあるので、そのスパークプラグがその車に合っているかを確認したほうがいいでしょう。
混合気が薄すぎる場合
混合気が薄すぎると燃焼室内の温度が高くなり過ぎてノッキングを起こしやすくなってしまいます。
キャブレター式のエンジンでしたら混合気の量を調整することは可能ですが、現在のインジェクションのエンジンはコンピューターにより自動で調整されているので混合気の量は手動では調整できません。
インジェクションのエンジンで、混合気の量がおかしくてノッキングが起きるのでしたらどこか制御系統の不良が考えられるのでそこを突き止めて修理しなければなりません。
また、空気をどこからか吸い込んでいる場合(インテークマニホールドのガスケット切れやその他のエアホース関連)も混合気が薄くなってしまうので、そちらの点検も必要になります。
修理費用は、どこから空気が混入しているのかを突き止めるのが時間がかかるので、一概にいくらとは言えないですし、どの部品を交換するのかによっても費用は違ってくるので、ちょっと見ただけで見積もりを出すのは難しいでしょう。
エンジンのかかる負荷が大きいとき
山道の急な上り坂が長く続く場合にはエンジンにかかる負荷が大きくなるのでノッキングを起こしやすくなってしまいます。
特に夏場の暑い時期などは、エアコンも使うしエンジンに負荷がかかるので、ノッキングのような音を感じたらエンジンを少し休ませることも必要です。
バキュームアドバンサーの不良
近年の車にはほとんど装着されていない装置で昔の古い車にはディストリビューターにバキュームアドバンサーという物が付いていました。
このバキュームアドバンサーはインテークマニホールドの負圧を利用して点火時期を早めたり遅くしたりする装置で、バキュームアドバンサーの作動がおかしくなると高負荷時に点火時期を遅らせることができないのでノッキングを起こしやすくなってしまいます。
バキュームアドバンサーの交換費用は、1万円~2万円くらいですが、古い車にしか装着されていないので、部品自体が無いかも知れません。
ノックセンサーの不良
ノックセンサーが壊れると、エンジンのノッキングをコンピューターが感知しなくなってしまい、ノッキングを防止することができません。
ノックセンサーの交換は、1万円~5万円くらいになります。
エンジンのノッキングが長時間続いた時のエンジンのダメージは
一時的な軽いノッキングが数秒間起きてもさして問題はないでしょうが、強いノッキングが長い時間続くとエンジンの過熱およびメタルの損傷にも繋がります。
また、オーバーヒートの原因にもなりかねますので熱効率も低下し燃料消費量も多くなります。
さらに、高速や高負荷走行時にノッキングが発生するとエンジンの燃焼室内の温度がさらに上昇してしまう為、最悪の場合にはスパークプラグの溶損やピストンの穴開きという不具合にも発展してしまう可能性もあるので注意が必要です。
まとめ
エンジンのノッキングが起きた場合には以上のように最悪エンジンのオーバーホール又は交換が必要になってしまう為、日頃からエンジンの異音には注意をして万が一ノッキングの症状が現れたら早めに点検をして原因を突き止めて対策することが大切です。
軽いノッキングならそれほどエンジンに影響は無いでしょうが、だからと言ってそのまま放っておくのも問題です。
ノッキングの原因がスパークプラグなどのようにあまり費用がかからない箇所ならいいのですが、エンジン内部のカーボンが原因などの場合には高額な修理代が発生してしまいます。
エンジンのオーバーホールとなれば10万円~20万円以上はかかるでしょうし、エンジン交換となればリビルト品を使用しても20万円~30万円以上はかかってしまうでしょう。
古い車や走行距離の多い車などは、そこまでのお金をかけて修理するのもリスクが伴います。
リスクというのは、今回その部分だけを修理しても他の箇所が後々壊れる可能性もあるからです。
そのようなことを考えると、車を買い替えたほうがいいかもしれません。
車を下取りに出した場合、修理にお金がかかるような車は査定額は0円で場合によっては廃車費用がかかってしまうこともあります。
それだったら、動かない車や廃車をするような車でも0円以上で買い取ってくれるカーネクスト
で買い取ってもらったほうが断然お得です。
もちろん、査定は無料ですし、廃車費用もかかりません。
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